
C)動揺暴露による平衡機能の変化
動揺暴露実験の前後に行われた平衡機能検査の解析を行った。重心動揺計の出力結果からは動揺暴露による影響は明確には把握できない。そこで、重心動揺計に記録された原データを用いて、総ベクトル長、スペクトル解析による体躯の揺れの平均周期(代表周期)を求めると共に、揺れの複雑さを表すフラクタル解析を行った。フラクタル解析に関しては、なお検討する必要があるので本報告には述べないが、体躯の揺れの総ベクトル長、平均周期に関しての解析結果について述べる。
図2.2.3-28に、重心移動の総ベクトル長および身体の重心の動揺のスペクトルから得られる平均周期の解析結果を示す。図中の半径方向とは、身体重心点の変位点の重心動揺計の中心位置からの半径方向のベクトル長の総和を表し、前後方向、体側方向とはそれぞれ前後方向、体側方向成分を表している。
図より、酔いを発症した被験者の場合には、体躯の重心の移動は体側方向に大きく、しかも右側に傾く傾向のあることがわかる。前後方向の移動は比較的小さく、前のめりになる傾向のあることがわかる。また、閉眼時の方が開眼時よりも僅かながら揺れが大きいことがわかる。一方、揺れの平均周期に関しては酔いの程度にあまり関係なく開眼状態では大きめに、閉眼状態では小さめに推移する傾向のあることがわかる。

図 2.2.3-28(1) 動揺暴露の平衡機能への影響(1)
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